「プロ野球に60年いるけどコイツだけ」ノムさんが姿勢を評価した梅野隆太郎は定位置獲得なるか?

金本監督率いる阪神タイガースは5月現在セ・リーグ首位を走っている。これは、好調な打撃陣が引っ張っているというのが1番の理由だろうが、それを陰で支えている要因として、レギュラーとしてホームベースを守っている4年目の捕手・梅野隆太郎の存在を指摘する声も多い。入団時には嘱望されていたがその後、低迷していた梅野だが、果たしてこのまま正捕手のポジションを確保できるのか。その可能性を検証してみた。

BBCrix編集部

野村克也氏に配球を初めて聞いたキャッチャーとは

5月7日の甲子園球場で行われた阪神対広島戦のニュースの中で、ちょっと気になる話があった。それは、5回表、2点を追いかける広島のチャンスに打席に立った丸佳浩に対してキャッチャー・梅野隆太郎のリードを論評した解説の野村克也氏が「梅野って俺のところにちゃんと挨拶にきた。全く繋がりないんだよ。プロ野球に60年いるけど、配球のことで色々訊いてきたのはコイツだけ」というエピソードを披露したのである。

野村氏といえば言わずと知れた大捕手であり大監督。そしてヤクルトの監督時代には古田敦也を名捕手に育ててヤクルトの黄金時代を築き、阪神の監督時代には矢野燿大を育てて退任後の優勝の下地を作った名伯楽でもある。その野村氏に、過去、古田、矢野を含めどのキャッチャーも配球について質問せず、梅野がその初めての選手だったということと、そして梅野の配球に対するこだわりと「俺はそこで生きていくんだ」という決意の2つに、感慨を覚えたのである。

アマチュアのころは「打てる捕手」として注目されていた梅野

福岡大学 梅野 隆太郎 選手(福岡工大城東出身) | 2013年インタビュー | 高校野球ドットコム 【埼玉版】

プロ野球選手を目指したのは母の遺言の後押し

梅野がプロ野球選手を目指したストーリーとして、小学校4年生だった時に母がガンで早逝し、その際に夫、つまり梅野の父に「隆太郎をプロ野球選手にして下さい」と遺言を残した、ということがよく知られている。父親は、男手一つで梅野と弟を育て、しっかりと遺言を守り、見事梅野をプロ野球選手にしたのである。

福岡大学では打てる捕手として注目

梅野の球歴を振り返ってみよう。

まず、福岡工大城東高校に特待生として入学し、2年の秋から捕手兼主将という重責を務めた。在校中に公式戦で24本塁打を打ったことで、卒業時にドラフトで指名される可能性もあったが、あえて地元の福岡大学へ進学。そして福岡大学では1年の春からレギュラーになり、リーグ通算28本塁打かつ打率3割を記録し、一躍「打てる捕手」としてプロの注目を集めた。

プロでも1年目は打撃を評価されたが、その後失速

ルーキーイヤーには飛躍を感じさせたが

2013年のドラフトで、阪神から4位指名で入団すると、1年目から新人選手でただ1人開幕1軍を勝ち取り、そのジャイアンツとの開幕戦で代打に出た後マスクをかぶり、さらには翌日の同カードでは代打でプロ初安打。4月27日のDeNA戦代打でプロ初本塁打を放つなど、梅野のプロ野球選手としての滑り出しは極めて順調だった。その年の通算成績は、92試合の出場と阪神の捕手では最多出場で、打率.197、7本塁打。打撃の意外性を含めて注目され、翌年以降の飛躍が期待された。

2年目以降、失った輝き

翌年は開幕戦から13試合連続でスタメンマスクをかぶるなど、いよいよ不在だった阪神に正捕手出現かと期待されたが、しかしその間にチームは6連敗。梅野だけの責任ではないにせよ、配球面での課題も指摘され、4月中旬以降は出場機会が激減し、結局その年は56試合の出場で打率は.239。さらに翌年は37試合で.135と、完全に輝きを失い、その間に育成出身ですい星のように現れた原口文仁の台頭もあり、もう梅野にとってのチャンスは潰えたか、と見えた。ここまでが2016年までの梅野のストーリーである。

2017年、巡ってきたチャンス

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ライバルが次々いなくなった

ところが、2017年になって梅野にチャンスが巡ってきた。原口が打力を生かすために一塁にコンバートされ、再び正捕手の座が空いたのである。しかし当初は、新人・坂本誠志郎をエース・能見と7試合でバッテリーを組ませるなど、正捕手は坂本、という方向にも見えた。ところが、3月の教育リーグで坂本が死球を受けて右手親指を骨折したのだ。そうなると、残る候補は33歳の岡崎と梅野しかいない。梅野はこのチャンスを逃さなかった。開幕から、スタメンマスクをかぶるようになったのだ。中でも、4月4日のヤクルト戦では2年ぶりとなる本塁打を打つなど、しっかりとその地固めをしたのである。

守備力で定位置を確保

3年間低迷した梅野だが、もともと肩の強さには定評があり、それが今のポジションの確保につながっている。盗塁阻止率は4割に近く現在セ・リーグ、ナンバーワン。自ら「捕手をしている以上は、いつも投手を助けたい」というように、捕ってから投げるまでが非常に速く、そしてテイクバックがコンパクトなため送球も正確である。

現在阪神はセ・リーグのトップを走っているが、その陰の功労者の1人は梅野だと元大リーガーの石井一久氏は指摘する。  「捕手は盗塁阻止で投手との信頼関係をつくる。梅野選手が刺してくれるという信頼から、投手はボール球を投げられる。逆に梅野選手も投手がちゃんとクイックで投げてくれると信じられる」

リードの方でも勝利に貢献している。能見が今季初勝利を挙げた試合では、1回表のいきなりの1死満塁のピンチにおいても、広島の5番新井、6番ペーニャをフォークの連投で連続三振に仕留め、しのいだ。梅野のリードが光った場面だった。こういう積み重ねで梅野は首脳陣の信頼を獲得し、しっかりと自らの定位置を確保し始めたのである。

本当の正捕手になるための課題はバッティング。まだまだ安心はできない

今は阪神の得点力があるから目をつぶっていられるが・・・

しかし、梅野にもまだまだ弱点はある。それは圧倒的に打撃力の低さだ。2017年5月12日時点では、規定打席をクリアしているが、打率は.200に届かず、同じキャッチャーのジャイアンツの小林とランキングの最下位争いをしている状態である。

元ロッテの里崎智也氏は指摘する。「(現在の阪神は得点力の高さで首位に立っているが)阪神打線の得点力が下がって負けにつながりだせば、いくら梅野の守りがよくても、打率1割台では、打撃優先の選手起用になるでしょう。それにリードの評価は、あくまでも結果論です。勝っていることが前提です。負けているのに、リードだけはよかったよねという評価はもらえません。そう考えると、最低2割5分は打たないとレギュラーとは呼べないでしょう」

阪神で10年間正捕手の座を守り、優勝にも大きく貢献した矢野燿大は、どちらかというと「守備の人」のイメージもあるが、当時の成績を振り返っても、レギュラーに定着した1999年以降3割を3回記録し、平均的には常に2割7分を打っている。それでいて盗塁阻止率も.350から.400だ。1年しか正捕手としては実働せず参考データではあるが、城島健司も2010年の打率は303で盗塁阻止率は.349だ。やはり、阪神で正捕手に定着するためには、バッティングの力が必須なのである。

ライバルも虎視眈々と逆転を狙っている

さらには、「超・変革」である。レギュラーに収まったと思って安心していても金本監督は常に競争の原理をチームに持ち込む。ショートのレギュラーになったと思った北條史也の打率が低迷すると見るや、新人・糸原健斗をスタメンに使うなど、レギュラーでもうかうかできない。骨折で離脱した坂本も5月中にも戦列復帰の予定だ。

さらには、一塁にコンバートされたはずの原口の「捕手復帰案」である。5月10日のジャイアンツ戦の8回の攻撃時に原口は、代打で登場しヒットを放った。そうなると打撃のいい原口をそのままベンチに下げたくない首脳陣は、その時点で打率.200の梅野を下げて原口をそのままキャッチャーに。この采配について、矢野作戦兼バッテリーコーチは言う。「3人目の捕手ということで。点をとっていかないといけないから。リードについてはそこまで求めてはいない。しっかりやってくれたら」

つまり、バッティングのレベルを上げていかないといつ正捕手の座を奪われるかわからない、というのが梅野の今の立ち位置なのである。

梅野は定位置獲得なるか?

阪神 梅野隆太郎 冷静さと必死の狭間で | 週刊ベースボールONLINE プロ野球・ドラフト注目選手のコラム・インタビュー・戦力分析・予想・試合レポートなど徹底取材

また、冒頭でご紹介した、梅野が野村氏に質問に行ったエピソードだが、まだその続きがある。5月7日放送のテレビのスポーツコーナーで、野村氏は2死1、2塁で広島・丸に対してカウント1ボール0ストライクからのインコースに要求した梅野のリード、そして2-2からもインコースにミットを構えたことに対し「(丸は一ゴロで打ち取ったものの)結果オーライ。狙われてるじゃん。これで満足していたらダメだ。間違っていたか正しかったか、梅野には反省してほしい。俺にはこの配球は間違い」と厳しく指摘した。まだまだリードにも課題はあるということだろう。

このように課題は抱えている梅野だが日々努力は続けている。「(スタメンとして)出られているからこそ、去年までとは違う色々な配球で、パターンも変えながらやれている。これまではその日の良い球を投げさせるリードだったが、今はそれぞれの打者との前回対戦時のデータをもとに根拠のあるサインを出せるようになってきている」と実感している。このような努力を続け、そして打率をあと.050上げれば、レギュラーのポジションは盤石になるはずだ。

開幕前の3月21日という亡くなったお母さんの誕生日に、同じく福岡出身の2歳上の一般女性と結婚した梅野。守るべきものができた中でさらなる飛躍をし、定位置が獲得できるか注目だ。

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