エンターテイメントにはやはり音、光の演出は欠かせません。特に舞台やライブなどは演出家やアーティストがこだわる部分です。屋外で行われることが多い野球では、少し光の演出というのは難しい部分もありますが、多くの球場でLED照明が導入されたこともあり、試合後などにイベントや花火の打ち上げなどが増えてきました。そんな中、ファンの楽しみの一つともなっている音楽。選手登場曲はその選手を覚えてもらえるきっかけにもなるし、一緒に乗りやすいフェス感覚も味わうことができます。

共同通信

裏側を支える演出チーム

 2年連続でCSを決めた横浜DeNAベイスターズ。その中でも9回のマウンドに登場する山﨑康晃投手の登場曲、『Kernkraft400/ZOMBIE NATION』のリズムに合わせてのヤスアキJUMPは完全にフェスです!!

 登場曲は人それぞれ思い入れがある選手が多いですが、山﨑投手は大学時代に日本代表としていったオランダの国際試合で自身が登板する際に流れていたのがこの曲でプロになったら使おうと決めたようです。また山﨑投手自らアメリカのカレッジバスケットの動画をツイートしたことで一気に広まります。さらにニコ生の実況を務めていた節丸裕一アナウンサーも番組内で歌ったことも認知に拍車がかかりました。僕も山﨑投手からその動画を見させてもらい『南さん、こんな雰囲気作れたら最高ですね!』と相談を受けていました。

 そこで相談したのが当時の演出チーム。ファンの皆さんがリズムを取りやすいように、ビートを変化させてみたり、少し低音を効かせたり、ループを長くしたりと様々な工夫をしてくれました。原曲を活かしつつもエフェクト(音響効果)の演出もしていたんです。さらに音をかけるタイミングもこだわっていました。

タイミングのこだわり

 ハマスタのライトスタンドの下にあるブルペンは3塁側のスタンドからの方が扉が開くのが綺麗に見えます。ですので、多くのベイスターズファンがいる1塁側からは次のピッチャーは登場曲で知ることになるのです。だからこそ、オペレーションルームと言われるビジョンを操作する部屋からカメラマンに指示を出しブルペンにレンズを向けるのです。動画をみてもらうとわかるように、ファンの皆さん今か今かと音がかかるのを待っています。そして動画34秒のところで山﨑投手が見えた瞬間に音をかけているのです。これは動画上で編集したものではなく、この刹那のタイミングで音響担当が音をかけているのです。最近はすでに音がかかる前にJUMPを始めているように見えますが、やはりファン一体となるためには音がなってからリズムに合わせてJUMPするのが全員の気持ちがよりひとつになるような気がしています。

 このタイミングに音をかけないと3塁側のファンの皆さんが先に次に出てくるピッチャーを知ることになるので、ホーム側(当時)のファンの皆さんにも早く知ってもらうためにこのタイミングに曲をかけています。選手とファンが盛り上がる様に絶妙に編集していて球場を音で煽り、最高のパフォーマンスをできるよう演出を心がけていました。

共同通信

どうなるLet’s GO YA-SU-SHI!?

 スワローズにもその登場曲とスタジアムDJのコールに愛された選手がいます。飯原誉士選手です。飯原選手の登場曲は『AGGRESSIVE/BOA』ですが、もう10年近く変わっていません。曲のリズムに合わせてライトスタンドから『やすし〜!!やすし〜!!』のコール。そして最後はスタジアムDJのパトリックさんの『Let’s GO YA-SU-SHI〜!!』を聞いてから打席に入るのです。

 当時飯原選手自身も『あれだけのコールをしていただけるので、登場曲は変えない』という話もしてくれました。しかし一部報道ではスワローズを退団とあり、あの登場曲とコールが神宮で聞けないのは寂しさがあります。今後、他球団に移籍した場合は登場曲をどうするのかも気になるところです。

試合のスピードアップと登場曲

 NPBでは打席登場曲を10秒以内に収めることを試合のスピードアップと合わせて推奨しています。しかし10秒以内とはいえ、サビの部分で音が途切れてしまうのはどうなのでしょう?

 やはり阿部選手の『September/Earth,wind & Fire』はライトスタンドから『しんのすけ〜!』を言えるところまでは曲をかけて欲しいなと思います。我々演出側もBPM(演奏のテンポ)を早めたり、かけるタイミングを伺ったりしながら最大限選手が力を発揮できるように、またファンの皆さんが感情移入しやすいように取り組んでいます。

今シーズンハマスタで再びヤスアキJUMPはできるか!?

 CS進出を決めたベイスターズは日程を合わせ、一度山﨑投手を抹消しています。今シーズン再びヤスアキJUMPができるのは、ベイスターズが日本シリーズに進んだとき。また日本一になった暁にはZOMBIE NATIONのハマスタでのライブも開催して欲しいと個人的には望んでいます。

 残りシーズンわずか。さらにCS、日本シリーズ。ホームチームのみに与えられているエンターテイメントパワーの登場曲。是非曲とともに感情移入してさらに選手たちを応援していきましょう!!

南隼人

著者プロフィール 南隼人

大学卒業後、スポーツMCのキャリアを重ね、2012年から横浜DeNAベイスターズのスタジアムDJに。2016年から実況アナウンサーを務め、侍ジャパンオフィシャルMCとしてWBCに帯同した。Bリーグアルバルク東京のアリーナMC、ロードバイク実況など様々なスポーツに精通し、自身でもスポーツイベント等のプロデュースも手掛ける。 FMヨコハマではスポーツ番組『ミナミスポーツ』のDJ。 また2004年には日本代表選手兼親善大使としてニューカレドニア世界親善野球大会に出場した経験も持つ。