わさびとの10年間の活動の中ではテレビや雑誌など様々な取材がありました。今回のコラムでは、球場での「密着取材」について、こんな風にして番組ができる、という過程をわさび&じゃーまねの奮闘と共にご紹介したいと思います。

取材のいろいろ

2017年9月14日 ヤクルト戦(神宮球場) ©Harumi Misawa

「取材」というと、テレビ、雑誌などの媒体で、形としては公式な記者会見、囲み取材的なインタビュー取材などなど……世の中にたくさんの取材があります。

 わさびの場合でいいますと、当日球場で始球式の前後にカメラさんからマイクを向けられたり、スポーツ新聞の記者さんが控室にいらして少し取材があったり……。こういった現場での「一言インタビュー」的なものはよくあり、これらは現場対応のみで終わる取材となります。

 それではテレビ番組で特集される「密着取材」というのは、どんなものなのでしょうか?

どこから取材の申し込みが来るの?

 番組により様々です。番組ディレクターさんから直接、私じゃーまねのところに連絡が来ることもありますし、番組がもっているリサーチ会社さんからお話しが来ることも。また、球団に申し込みが入り、球団広報さんから連絡をいただくこともあります。

取材期間はどのくらい?

 こちらも様々ですが、一番長かったものはお話しが来てから放送までに半年かかったこともありました。その間の流れは、リサーチ会社から連絡があり、資料などをお渡しながら何度か電話取材でやりとり。その後、番組の制作会議で正式に取材が決定し、番組プロデューサーさんからご挨拶のお電話。

 後日ディレクターさんが打ち合わせに来て下さり、その時は北海道日本ハムファイターズ戦(鎌ヶ谷)・千葉ロッテマリーンズ戦の2試合の現地密着取材と、試合とは別途、自宅や動物病院でのロケなども同時進行。取材で撮影した映像以外に、写真などの様々な資料や画像提供など……。そして放送を迎えるまでに半年。いやー、長かったです!
(2015年7月22日放送 テレビ朝日「ペットの王国ワンだランド」 30分番組)

2015年6月10日 千葉ロッテマリーンズ戦(始球式後・控室にて) ©Harumi Misawa

 一番短期の「密着取材」はというと。

 試合の前々日に球団を通して連絡があり、前日に資料を送り、当日現地で待ち合わせ。当日の球場入りから始球式まで取材同行し、(その日の夜中に編集して)翌日に3分ほどの特集で放送! という最短取材もありました(さすが報道、スピード勝負!)。
(2017年5月12日放送 フジテレビ「みんなのニュース」)
(2017年9月18日放送 テレビ朝日「グッドモーニング」)

撮影クルーは何人くらい?

 わさびの場合は、多い時でカメラ4~5台+音声さん。たいていはカメラ2~3台+音声さんでしょうか。ありがたいことに球団にご協力いただき、少し広めの控室を用意していだいた際には、控室の様子も撮影します。

 当日は、わさびのコンディションや気持ちを何より大切にしているじゃーまねですので、事前に取材陣にも注意事項などは細かくお伝えしてあります。また、わさびが初めての人を警戒したり、控室でも同席して落ちつかないような場合は、わさびを最優先に考え、取材の方には席を外していただくこともあるのですが……。

 人なつこいわさびは、たいてい仲良くなっていたり、音声マイクについている大好きな「もふもふ」たんをチェックしたり、皆さんがいても眠いときには寝たり、とマイペースな様子で過ごしています。

2017年9月14日 ヤクルト戦(神宮球場・控室) ©Harumi Misawa

 テレビだけでなく、雑誌の密着取材も入っている場合は、人も多くカオス状態の控室(汗)。わさびが「本番一発勝負」ということは、撮影班も「本番撮りのみ」ということですから、その瞬間を撮り逃さないよう、球場スタッフさんも交え、それぞれのカメラ位置や流れの確認など、短時間のうちに綿密な打ち合わせが行われます。一番冷静なのがわさびだったりするかも??

ボール運びのとき、ベンチの反応は?

 密着取材カメラが数台ある時には、ベンチやスタンドの様子も撮影していることがあります。わさびがボールを運ぶ時のベンチの反応はというと、選手の皆さんが身を乗り出して見守ってくれ、無事にマウンドまでボールが届けられると、笑顔で拍手を送ってくれます。

 球場の公式映像はビジョンや野球中継に流れていますが、2013年のオールスターゲームでわさびがボールを運んだ時、セ・リーグベンチに一瞬カメラが向いた瞬間、当時の原辰徳監督(読売ジャイアンツ)、高木守道監督(中日ドラゴンズ)、小川淳司監督(東京ヤクルトスワローズ)のお三方が、試合中には見たこともないような笑顔で顔をほころばせてわさびのボール運びの成功を喜んでくれた映像も話題になりました。

球場以外のロケ

 球場の現地取材以外にも「普段の様子は?」「どんな練習をしているの?」と言ったシーンの撮影もあり、試合の日以外にも別途ロケがあります。たいていは自宅での様子や、ドッグランでの練習など。獣医さんにご協力いただき病院での診察の様子などもありました。
(2016年4月30日放送 TBS「生き物にサンキュー!」 10分特集)

 面白かったのは「わさびの行きつけのお店を紹介」という、某番組さながら「わささんぽ」のような企画もあって、ドッグカフェでおいしいものを食べるという、グルメレポ―ターのような楽しいロケもありました。
(2015年5月放送 J:COMテレビ「ワンニャンクラブ」 30分特集)

ドッグカフェで、わさびの大好きな「軟骨肉団子」を紹介 ©Harumi Misawa

 このように1回の放送のために、何度もロケがあり、膨大な時間の映像を撮影します。例えば10分の放送のために、何日も、何十時間分もカメラを回し続けているのです。ではそこからどうやって編集していくのでしょうか?

密着取材は戦いだ!

 取材の時に大切にしていることは多々ありますが、主にあげるとしたら3つ。

 ・現地取材では、試合運営やお客様のご迷惑にならないこと。
 ・わさびのコンディションや気持ちを最優先すること。
 ・放送や編集の内容が、私たちの活動の真実を伝えられるかどうか。

 特に3つ目は、ドキュメンタリーなのかバラエティなのか、番組そのものの方向性もありますが、同じ「始球式」のシーンを撮影しても編集の仕方によっては180度ちがう伝わり方をする場合もあります。面白いところだけをつまんで「珍しさ」だけを強調したり、「かわいい」だけのアイドル犬として放送したり……。それだけでは私たちが本当に伝えたい真実の姿ではありません。

2016年3月20日 千葉ロッテマリーンズ戦 ©Harumi Misawa

 しかしほんの数日同行しただけで10年間の思いを汲み取れというのも無理な話でもあります(意図的な編集はさておき)。始球式当日は話す間もないくらいのドタバタですので、事前にまとめてある「わさび参考資料」をお渡しして、これでもかというくらいに事前の打ち合わせを大切にしています。

 それは、30分番組の特集であっても、3分の放送であっても、1ページの雑誌でも6ページの特集でも同じです。たった3分に、その膨大な10年間のエピソードがおさまる訳は当然ありません。でも、私たちのこれまでの歩みや日常の絆があって、当日の「その1球」があるということを、知ってもらっているかいないかでは大きな差があります。

 よく小説などで「行間を読む」という言葉がありますが、何十時間の映像を数分にする「編集作業」において、どのシーンをピックアップしていくのか、そしてそれをどういう構成でつないでいくのか、視聴者の方がその「行間」を感じるには、ディレクターさんが「その背景」を知っているかいないか、その重要性を実感しています。

球場音声マイクの「もふもふたん」が気になるわさび 2016年4月26日 北海道日本ハムファイターズ戦(鎌ヶ谷) ©Harumi Misawa

 そうは言っても、放送時間の関係でそれが叶わぬことも多々あります(その瞬間にしか撮れなかった貴重なシーンのほとんどが、お蔵入りしてしまうことに流した涙はいかほどか……)。またテレビの在り方として、私の周りでも「テレビ業界の人は……云々」「編集で意図せぬ放送されて云々……」という話しも多々あります。

 それでも私が接した番組スタッフさんたちは皆さん、番組作りに対する姿勢もとても真摯で、じゃーまねの熱い思いにもきちんと耳を傾けて下さり、誠実な方達ばかりだったと思います。

 番組作りのプロである制作スタッフさんたちにお任せするところはお任せして、かつ私たちの思いはきちんと伝えていく。できること、できないことの中で、最大限あちらの要求にお応えしつつも、絶対に譲れないところは信念として守っていく。密着取材の特集番組は、大きな影響力がある分、真剣勝負の戦いでもあるのです。

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<著者プロフィール>
「ベースボール犬わさび」のパートナーであり、マネージャー(通称:じゃーまね)
わさびと共に、ボールを運び10年目。「ボールを運ぶ」というレトリーブの技術よりも、球場という場でいかに楽しくいられるか、というわさびの気持ちを大切にしながら活動中。
「わさびの信頼に足るパートナーたるか」を自身に問いながら、日々精進。「命を預かるのは命がけ」をモットーに、わさびの栄養管理・食事管理を担い、「本番一発勝負」のプロフェッショナルなお仕事ができるよう心がけている。(ペット栄養管理士/愛玩動物飼養管理士/犬のためのホリスティックケア・アドバイザー)
本業は、作曲家・ピアニスト。

<ベースボール犬わさび プロフィール>
柴犬・♀・13歳
2008年 独立リーグ・BCリーグ 信濃グランセローズ戦でデビューし、千葉ロッテマリーンズ、北海道日本ハムファイターズ(鎌ヶ谷スタジアム)、東京ヤクルトスワローズ(神宮球場)など様々な球場でボールを運び、マツダオールスターゲーム2013・第3戦(福島県いわきグリーンスタジアム)の始球式にも登場した。今季10年目・通算50試合。柴犬初のベースボール犬として、ボールと笑顔を届けている。
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Harumi Misawa

著者プロフィール Harumi Misawa

柴犬初のベースボール犬「わさび」のパートナーであり、マネージャー。通称「じゃーまね」。 プロ野球の始球式でボールを運び、今季10年目・通算50試合でボールと笑顔を届けている。