「ポン」と栓が抜ける音がした。

 「ポン」と栓が抜ける音がした。

 新球団社長の揚塩健治氏は、年始の訓示で「優勝を口に出せ」と選手たちを囃した。それもあってのことだろう、金本知憲監督以下、どのコーチも、どの選手もマイクを向けられれば真顔で「今年は優勝」と言う。若い選手もベテランも、何か吹っ切れたように真顔で「今年は絶対に優勝したい。そのメンバーとして活躍したい」と言う。

 早いものでキャンプも中盤、第3クールが終わる。ここに来て大きな出来事があった。金本監督が事実上のレギュラー確定発表を行ったのだ。対象は、もっぱらセカンドを練習させていた大山悠輔をサードへ。昨年ゴールデングラブ賞を獲った不動のサードレギュラー鳥谷敬をセカンドへ。鳥谷については2年連続のコンバートとなる。

 このように書くと、なにやら大問題のようだが、実にスムーズに、淡々と決した。まるっきり誰もが納得して、すんなり受け入れたようだった。

 あふれんばかりの将来性を感じさせる大山。将来の「4番サード」として使っていけ! 内外からの声は、日に日に高まっていたし、1日また1日と過ぎるたびに大山自身がそれにふさわしいというところを見せていた。誰の目にも、将来の阪神打線を背負う大山の姿が想像できるようになっていた。

 ある意味、「サード鳥谷」のほうがもともと少々歪んでいた。負担の大きいショートの守備から解放してやって、打撃に集中できるようにしてもう一度勝負させてやりたい。それがサードコンバートの真意だった。サードというポジションにふさわしいキャラクターか、将来の展望はどうかという点は二の次だった。連続試合出場記録が進行している鳥谷のサードがまた「聖域」になりかけていた。

 金本監督が一度歪みを正す決断をした。結果を残した鳥谷だったが、正三塁手としてこれ以上の打撃成績の伸びを期待するのは無理がある。「打撃に専念させることで能力を向上させる」というスペシャルアイテムは、鳥谷よりも大山に装備させたい。

 よく決断した。危機管理と称して鳥谷が二塁、大山が三塁を守ったのは2月6日。この日からこの流れは決した。確かに鳥谷の離脱に備え、大山が三塁を練習するのは理にかなう。しかし、大山の離脱に備えて、サードレギュラーの鳥谷が二塁の練習をするのは理屈に合わない。そこからはあまりグズグズせず、早かった。

 「ポン」と栓が抜ける音がした。
 金本監督は聖域を作らないことを決めた。鳥谷だけじゃない。糸井嘉男も福留孝介も、もしも不振なら優勝のために代える。当然「セカンド鳥谷」も聖域ではない。

 「ポン」と栓が抜ける音がした。
 新外国人ロサリオが、一振りで運ぶ。若虎たちが一発で仕留めようと続いた。このチームはもう貧打に苦しむチームじゃなくなった。

 「ポン」と栓が抜ける音がした。
 高卒2年目の才木浩人が長身から剛速球を投げ下ろす。年齢経験問わず全員が戦力になれることを証明した。先輩たちが目の色を変えた。

 「ポン」と栓が抜ける音がした。
 背番号53を継ぐ男、島田海吏が打ち、走る。
 足のある者は迷いなくスタートを切る。ショート、セカンドを争う選手たちにも炎が燃え移った。

 「ポン」と栓が抜ける音がした。
 まだ栓はあるのか?この宜野座でぜんぶ抜いてしまうがいい。

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鳥谷をどかしてでも「4番サード大山」を育てるべし鳥谷と大山に見る「扱いと打順の軽さと重さ」金本監督が見込んだ巨大エンジン搭載のスラッガー・大山悠輔(阪神)
鳴尾浜トラオ

著者プロフィール 鳴尾浜トラオ

ライター。 主な虎活動は「自称阪神タイガース評論家」【リンクhttp://torabaka.jp/torao/】(ブログ・03年~)、書籍『虎暮らし』(扶桑社08年)、阪神タイガース公式携帯サイト(10~12年・コラム『トラオの視点』)など。他は本名の菅野徹で執筆。