菅野剛士のスイングの素晴らしさ。

 待ちに待った2018年シーズン開幕。ということで、我がマリーンズの開幕第2戦となるイーグルス戦を見るために、ZOZOマリンスタジアムにいそいそと足を運んだ。

「いいものを見た」というのが第一印象。単に、マリーンズが6対2で勝利したというだけでなく、その勝ち方が良かったのだ。何といっても、昨年までにはなかった、次の塁を狙おう狙おうという姿勢、そして、藤岡裕大と菅野剛士という2人の新人選手の存在感に目を見張った。

 特に注目したのは、菅野剛士の打撃である。1回裏、弾丸のような打球がライト線を襲う、自身の初打点となる三塁打と打ったときの、素晴らしいスイングに魅了された。

 菅野剛士(スガノ・ツヨシ)。背番号31、外野手。東海大相模高から明治大学、日立製作所を経てマリーンズへ。身長が171cm(私と一緒)で体重81kgだから、昭和の野球漫画では「豆タンク」と呼ばれるような体型である。

 その菅野剛士の大学時代のスイングについて、小関順二氏が著書『2018年版プロ野球問題だらけの12球団』において、冷静に分析している。

「強く振る」という思いが強すぎたのか始動やステップの動きが淡白に見えたが、これは大学4年時にクリーンナップを組んだ髙山俊(阪神)にも共通する動きで、明治大の特徴である。
小関順二氏『2018年版プロ野球問題だらけの12球団』(草思社)

 その菅野剛士が、マリーンズに来て、見事な三塁打を打った。そのときのスイングも確かに「強く振」っていた。ただし「強く」という言葉から連想される「力任せなマン振り」とは、少々イメージは異なる。

 何というか、身体の使い方が柔らかいのだ。柔軟で自然で無理のないかたちで強く振っている。言わば「人間的なスイング」。

 話は変わるが、山田哲人(東京ヤクルトスワローズ)のスイングにも同じものを感じる。山田の場合はある意味、菅野剛士よりも格上で、「あぁ、ごくごく簡単にヒットを打っているなぁ、あれなら俺にも出来そうだなぁ」とまで思わせるほど、柔らかくて自然で、異常に「人間的」なスイングなのだ。

それほど本当に「昔が良かった」のか?

©共同通信

 どこの世界でも、年かさの増した人々が声高に「昔は良かった」と語り出す。

 野球界は特にそうで、オールドファンの話を聞いていると「昔のプロ野球に比べて、今のプロ野球は程度が低い」という気分になってしまう。「現代最強のホークスでも、昭和のV9ジャイアンツにボロ負けしてしまうかも?」という感覚に陥ってしまう。

「本当にそうか?」――そんな思いで、昔の強打者のフォームを見る。そして驚く――「なんて不自然なフォームなんだ!?」。

 王貞治の一本足打法は言うまでもなく、長嶋茂雄や野村克也も、何だか窮屈そうなフォームで構えている。張本勲と落合博満は、窮屈な感じこそしないが、簡単には真似できなさそうな、汎用性の低いフォームである。そして若きイチローの「振り子打法」。

 それらをオールドファンは「個性」と言う。ただし、技術論素人として誤解を恐れずに言えば、おおよそスポーツの動きというものは。「個性的」=「非人間的」なものから、柔らかくて自然で「人間的」な方角に進化していくものではないだろうか。

 だから、菅野剛士や山田哲人のようなフォームを愛でるのが、野球ファンとして正しい観点だと思うし、少なくとも、菅野剛士や山田哲人のようなフォームが、王や長嶋に比べて「個性」が無いから程度が低いということは、決して無いだろう。

 同じく投球フォームについても、例えば、日本にいた頃のダルビッシュ有(現シカゴ・カブス)の柔軟なフォームに、完成された「人間性」を感じた。それは、昭和の球界によくあった「●●投法」と名付けられる「個性的」なフォームよりも、魅力的なものに思えた。

 プロ野球に、まだたったの数試合しか出場していない新人選手から、ここまで話を広げるのはどうかという気もするが、「昔は良かった」と安易に言うなら今にワクワクしていたいし、「現代最強のホークスは、昭和のV9ジャイアンツに圧勝する」と信じる。それが、私の野球を見るスタンスなのだ。

 そして、スイングの話だけでなく、プロ野球という文化全体に「人間性」が尊重されればいい、プロ野球が日本の「人間性」尊重の旗頭となるべきだと思っているので、こういう論旨の原稿を書いてみた。

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スージー鈴木

著者プロフィール スージー鈴木

大阪府東大阪市生まれ。50歳。野球文化評論家。音楽評論家。著書に『【F】を3本の弦で弾くギター超カンタン奏法』『1979年の歌謡曲』『1984年の歌謡曲』。7月発売の新刊に『サザンオールスターズ1978-1985』(新潮新書)。